ニコンのレンジファインダー機「S3」には、「オリンピック」モデルと呼ばれる1965年に販売されたブラックボディがあり、その数2000台と言われています。
オリジナルのシルバーボディは1958年に発売されて、数年の間(1961年くらいまで)に12000台ほどが造られたと言われています。
「オリンピック」という通称には諸説ありますが、東京オリンピック(1964年)で報道向けに提供されたカメラ「SP」に付いていた標準レンズ(ガウス式)と同じものを、ブラックボディのS3に付けて再生産したので、そう呼ばれるようになったそうです。
さて、S3ですが、30余年を過ぎて2000年に復刻されます。そのシルバーボディは完全予約生産制という形を取り、7~8000台も製造されたと言われてます。そして2002年には、2000台限定でブラックボディも復刻されました。
前置きが長くなりましたが、先日、アローカメラにブラックボディのS3の買取り依頼がありました。これからの検証は、あまりプロチックな目線じゃありませんが、その分、楽しめるのではないかと思って報告します。というのも、希少なモデルゆえ情報が少ないのと、それゆえ、疑いの視線から入ってしまう点、お許しください。
このブラックのS3、外装がビックリするくらいキレイなのです。なので、まず、2002年の復刻版でしょ!?と疑ってしまいます。ただ、2002年の復刻版は製造番号の刻印部分やフィルム感度表記などで、すぐに見分けがつく為に、この個体が2002年の復刻版ではないことは、程無く判明します。
次に、後塗りでしょ!?と疑ってしまいます。これについては、まず否定的な視点から、当時の黒塗りはもうちょっと厚みがあって艶っぽいのでは?などという感覚論だったり、こんなきれいな外装を保てるのか?などという漠然とした観点がメインになります。
しかし、肯定的な視点からだと、ビスが外せるところは別として、リベット止めしている部分の塗装は難しいらしく、この個体のその部分はかなりキレイだからホンモノだろう?など、現実的な観点が挙げられます。
あと、別角度からの推測では、この個体、外装はとてもキレイなのだけど、ファインダー内部にカビや劣化が見受けられるのです。例えば、中古カメラブームと言われた15年くらい前に、後塗りされたものだとした場合、これだけ丁寧な塗装をしたら、ファインダー等のクリーニングも一緒にするだろう。だとしたら、10年少々で内部だけこんなに劣化するものだろうか…?この外装と内部の劣化の差は、相当年数に渡って使われずに保管された結果もたされた、ファインダー内部のカビや劣化だと考える方が適当。
と、まぁ、こんな風にああでもないこうでもない…したのですが、結果的には製造番号からして1965年の通称「オリンピックモデル」であろうことが簡単に判明しております。
あと、興味深いところでは、レンズフード。これまたキレイな状態を保っているのですが、取付け部分の溝の辺りだけ、塗装が微妙に変色して青味がかってきていました。これって、ニコンF系のレンズフードなどでも案外と見掛けるパターンで、これもまさに時代物であることを物語ってくれています。
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