我楽多屋で買った    モノ・マガジン

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我楽多屋で買ったモノ・マガジン 第293

期限切れのフイルムを自慢する新しいゲーム

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ガラクタ屋さんで、数年前に買った大量の120のコダックのモノクロフィルムの話です。ひょっとしたら以前に取り上げていたかもしれませんが、今回はその後日談ということです。

チェコの有名な写真家Josef Sudekの作品は全てがモノクロームですが、この大写真家と親しくしていて、数年前にコロナで亡くなったチェコの写真家Pavel Vacha.の話では、Sudekは放出品の専門のお店で期限切れのモノクロフィルムを買って使っていたそうです。だから独特のトーンになるのではないかという話でした。

この伝説的なストーリーは私の頭の中に長く保存されていて、1983年にニューヨークにいた時も、今はもう存在しないワールドトレードセンターの1階にあったカメラ屋さんのワゴンセールで500枚位の既に期限の切れているモノクロ印画紙を買いました。これがなかなかいい調子だったのです。

ガラクタ屋さんで手に入れた数十本のコダックのベリクロムはその期限が1976年の9月と印刷されていました。半世紀近く昔の期限切れフィルムです。ガラクタ屋さんで、この大量のフイルムの山を見て、私が全部買いますと言ったら、二代目さんは結構割引をしてくれたので嬉しかったです。これが数年前の事でした。早速町歩きに使ってみました。

いつもの秘伝の鰻屋のタレの処方の現像方法でちゃんと画像が出ました。でも注意しなければならないのは何しろ50年前に期限の切れたフィルムです。画像は出ているのですが、ベースがかなり被って黒くなってしまいました。

私のFacebookでもその一部を紹介しましたが、スキャンするならちゃんと見ることができます。しかし、これを従来のダークルームで、普通の印画紙にプリントするのはちょっと不可能です。フイルムのカブりがすごいわけです。

でも、冷静に考えてみると、今の時代はフィルムカメラがブームで、テレビでも若い人がフイルムカメラを使うことがトレンドになっていますけれども、その発表方式というのは、印画紙にプリントするのではなくて、全てがスキャンデータでオンラインで見せるという方法なのですね。

その発表形態で行くのなら、50年前に期限の切れているコダックのモノクロフィルムでも充分実用になるというか、実際こちらの活用方が正しいと思います。

1980年の11月に8年ぶりに日本に戻ってきて、私がやった事は当時住んでいた調布から2眼レフカメラを持って渋谷経由で撮影に行く事でした。その時買っていたのがこのコダックのフイルムで、確か値段は120円だったと思います。日本カメラの古い1962年の資料で調べてみたら、当時の国産の感度100-120フィルムは定価が190円でした。

だから、当時ヨドバシで売っていたコダックのモノクロフィルムはかなり安かったわけです。でも振り返ってみると、今の値段は3000円近くするから大変な物価高騰ですね。

フィルムの値段が一挙に上がった7年か8年前のことですが、カメラ愛好家の皆さんは自分はトライエックスフィルムを100本持っているとか、そういうのが自慢であったミニブームがありました。

でも、これからはトレンドの潮目が変わって来て、いかに古い期限切れのフイルムを持っているかということが自慢の種になりそうです。

 

   

(2024.3)