SUZUKI'S AUTO FOCUSのその後
★明日の日曜日(6月12日)、我楽多屋は臨時休業させていただきます。よろしくお願い申し上げます。
「SUZUKI'S AUTO FOCUS」と記された、謎のカメラを2ヶ月半ほど前に話題にしました。その謎のカメラについて、私なりに解明出来た範囲のことを。
SNS上では、探偵みたいなカメラ屋さんとか、カメラが好きなのが感じられる~とかいう反応があって、皆さんこういうネタにも興味があるんだなぁ~と気付きました。
さらに、我楽多屋のお客さんからは「とても関心があるので、売り物でまだ残っているのなら、是非とも更なる解明をしたい!」とのお申し出をいただきました。
そのお客さんは分解修理に深い知識をお持ちの方なので、これは願ってもないお申し出!ということで、「SUZUKI'S AUTO FOCUS」を託すことにしました。
1ヶ月足らずで、以下の報告がありました。その報告を私なりの言葉で紹介させていただこうと思っていたのですが、その作業がとても難しいのでお許しを得て、そのまま引用させていただくことにしました。
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このカメラはリコーの前身、理研光学時代だった1940年に発売されたベスト判で4x4撮影のできるロイコです。
これに「実用新案第826号出願中」とされる「鈴木式連動装置」なる距離計を組み込んだのが本機です。距離計のカバーの上には確かに「PAT APLD(Patent applied)No.826」とあります。
ただし、30、40年代の距離計関連のパテントを全て確認しても、この実用新案を発見することはできませんでした。
ロイコに元から付いている画角用のファインダーは距離計用の光路を確保する為に側面に穴が開けられ、距離計カバー内に組み込まれそのまま流用されています。
アクセサリーシューは取り外され、トップカバーにも距離計を載せる為に容赦無く穴が開けられ、Roicoの文字にもネジ穴が被ってしまっています。
距離計の基線長内に画角用のファインダーを入れる仕組みは、オスカルバルナツクによる1934年の実用新案出願公告第117号の登録請求の範囲で、「図面に示す如く距離計箱内に距離計の基底をなす二投射窓の間にファインダーを設けたる寫眞機の構造」に抵触していると考えられます。
今の遵法精神を持ち出して論ずるのはナンセンスだと思いますし、「まぁ大丈夫だろう、やってしまおう」といい加減にやっていた例はいくらでもあるとは思うのですが、とすれば何故人目につく広告に実用新案出願中の案内を出したのかは疑問です。
この実用新案が見つからなかったことから、もしかしたら出願したこと自体が箔を付けるためのハッタリの可能性もありますし、具体的なことはわかりませんでした。
カメラ中の距離計の仕組みはバルナックライカによく似ており、レンズの前後移動に連動して動くプリズムと二重像を生み出すハーフミラーで構成されていますが、この2つの配置がバルナックライカとは逆なため接眼位置がボディの中心寄りになっています。
「Suzuki's Auto Focus」と刻印された距離計カバーは当然純正品ではなく後付けされたものですが、形状に不自然な部分があります。
これは当時の広告を見ると理由が解るのですが、この改造は主にゲルトを距離計連動改造するために考えられたアイデアで、巻き上げノブを避ける為にえぐられた部分がロイコでは無用の長物となり不自然な造形になっています。
「PAT APLD No.826」のPLの部分にネジが被ってしまっているのも同様の理由と思われ、これは距離計調整用の隠し蓋の役割をしているのですが、ゲルトを想定して作られたカバーの為に文字に被る形でネジ穴を開けることになってしまったと考えられます。
見た目はともかく、ロイコでも使える距離計ユニットと判断して改造された物でしょう。メッキはロイコの部分と異なりよく見ると質感が異なります。また質も悪く距離計カバーの部分だけ錆が発生しています。
(中略)
この個体の一点気をつけなければならない点は、実はレンズとシャッターが交換されている点です。
レンジファインダーが改造により搭載されているため、この2点も同じ時に改造されたと考えそうになりますが、こちらは残念ながらこの数年内に趣味人の手により交換された事が調査により分かりました。この点を気をつけて見なければなりません。
ロイコの本来の組み合わせはNKSシャッター、もしくはRKKシャッターとロイコアナスチグマートです。現在付いているセイコーシャラピッドシャッターとシムラーの組み合わせはロイコと比較的登場時期の近いミニヨンに搭載されている物です。
そのため時代考証を全く無視した組み合わせとまでは言えないのですが、もしどこかでロイコの組み合わせを見つけたら元の姿に戻してあげようと思っています。
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謎だったカメラについて、見事な捜査と解明。とても興味深く読ませてもらいました。ありがとうございます!
そして、既に後日談があるんです~(^^)。また改めて報告いたします。
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