我楽多屋で買った    モノ・マガジン

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2022年3月22日 (火)

SUZUKI'S AUTO FOCUS

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常連さんが「これは正体がイマイチ分からないカメラなので置いて行きますから~(お金は要らないという意味で)」と、言って持ち込まれたカメラです。

とはいえ、他のものと合わせて物々交換という形で引き取りました。

当然常連さんもいろいろ調べた上でのことだろうから、ネット検索で簡単に結果が出るものでもないはず。時間があるときに、店にある本で調べてみようと思いました。

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まず、このカメラを見て確認出来るのは、トップカバーに「SUZUKI'S AUTO FOCUS」と刻印されている点と、レンズに東京光学のシムラーが付いている点。

でも、「鈴木」というブランドやメーカーのカメラは戦前戦中戦後を通して見当たりません。

広告記事を集めた「昭和10~40年 広告に見る国産カメラの歴史」(朝日新聞社刊)を見ていたら、1943年頃にカメラの改造をする業者の広告があって、その中に距離計連動への改造をすることが記されていました。常連さんもそこまではご存知であることを話の中で聞いていました。

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その広告の中に「鈴木式連動装置」という文字を見つけました!

すると、次はベースになったカメラが何か?なんですが、ボディにそれが分かる刻印などが何も無いのです。「国産カメラ図鑑」(朝日ソノラマ刊)に出ているたくさんのカメラの写真から、各部の形状が似ているものを探して「ロイコ」(理研光学)であろうことがほぼ判明。

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でも、ここに至るまでにはレンズにシムラーが付いていることも条件として合わせて探していたので、遠回りをしてしまいました。

どうやら、レンズも元々このカメラに付いていたものではなくて、「ミニヨン」(東京光学)のレンズを移植されたようなのです。シムラー6cm/3.5が付いているカメラが他に見当たらないのと、レンズとシャッター(セイコーラピッド)の組み合わせが「ミニヨン」でしかなさそうだし、見や目もそのもの。

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ということで、このカメラはロイコを鈴木式の距離計連動に改造し、当時評価がされていたシムラーレンズに付け替え改造までされたものであろうと推測されるのです。

この件を元オーナーの常連さんにお話したところ~追加で確認出来たことがありました。ミニヨンは前玉回転式なので、ロイコに付け替える際にはレンズを固定するなどの改造も合わせてされている点。

最後になりますが「興味深いなぁ〜」と思ったのはこの種の改造について、ユーザー側から需要があったのか?それとも業者側からの提案的なものなのかは別にして、広告を出して商いにしようとしていた当時の時代性や文化をのぞき見ることが出来たことです。

 

★3月25日(金)、我楽多屋は臨時休業させていただく予定です。