我楽多屋で買った    モノ・マガジン

Powered by Six Apart

我楽多屋で買ったモノ・マガジン 第273

カメラのオリジナルボックス評論家から見た

Kallo Wideの箱のデザイン

Img_0767

ガラクタ屋さんの在庫で私が非常に興味を持っている事は、カメラのオリジナルボックスが結構な割合で登場することです。

カメラのオリジナルボックスのネタでKallo Wideに関しては、ガラクタ屋さんで買った物マガジンで以前やったかなぁという記憶もあるのですが、その後の私の研究成果ということで読んでください。

何しろ今の時代に、カメラのオリジナルボックスの魅力というのは全く失われてしまいました。友人が買ったライカM10のオリジナルボックスを見せてもらったのですが、魅力全然ありませんでした。

「クラシックカメラの本当の魅力は、カメラ本体よりもオリジナルボックスにあり」

これがカメラの箱評論家の私が発見した標語です。

カメラの箱コレクターとしては、中に当時のカメラがオリジナルで入っているのが理想のコレクションのかたちなのですが、これはなかなか難しいことであって、とにかくオリジナルボックスだけが廃棄されずに人類のカメラの歴史の時間軸の上に残っているというだけで、貴重な文化遺産であると言わねばなりません。

Kallo Wideのオリジナルボックスは、当時のニコンエフのオリジナルボックスに比べるとかなり薄いというのが特徴です。カメラの厚さがないから、それだけ薄くなったわけですね。

Kallo Wideが私にとって非常に貴重なスナップシューターである理由は、1960年代初頭に写真家の春日さんがこのカメラで東京を撮影して素晴らしい作品を出していることでした。春日さんは60年代初めの平凡社がやっていた、太陽賞も受賞しています。

その春日さんが使っていたカメラというので私も探していたのですが、当時の競合カメラであったオリンパスワイドなどに比べると、球数が非常に少なくてカメラ探しに苦労しました。

滝野川5丁目にあるカメラ屋さんで手に入れたのですが、当時25,000円もしたのですけれども、それでも安いなと感じたものでした。

画像に写っているカメラは最近手に入れたものでリペイントされたものですが、昨年の8月に日本カメラミュージアムで開催された春日さんの回顧展に彼が愛用していたカメラが展示されていて、それが下手な手ぬりのブラックリペイントなのです。

写真に写っているカメラはプロが焼付塗装をしたものですからレベルはずっと上なのですが、写真家春日記念という意味で入手しました。

素人の手塗りのブラックペイントといえば、最近ライカのオークションで登場した品物に有名なアメリカの写真家ウォーカーエバンスが1940年にマンハッタンの地下鉄を撮影したときに、カメラを目立たなくするために自分で下手なブラックのペイントをしているので、まさに大都会を撮影する写真家が下手な自分で手塗りしたブラックカメラというのは、何か胸を踊らせるものがありますね。

ところでオリジナルボックスが真っ赤なことですけれども、当時の同じ時代の国産カメラはなぜか皆同じようにカメラボックスのデザインが真っ赤なのです。私が1967年に初めて買ったライカM2のブラックペイントのオリジナルボックスもデザインが真っ赤でした。つまり当時の国産カメラはライカのオリジナルボックスのデザインを真似していたようなのです。

ところでガラクタ屋さんで私が手に入れた、ライカのオリジナルボックスという宝物がありまして、それは戦前のバルナックライカのオリジナルボックスです。

当時のライカは赤いボックスで植毛したような素材でした。当時のカタログを見るとわかるのですが、そのライカのオリジナルボックスの中にパーテーションを差し込んで現像済のフィルムが20本ぐらい入るような、そういうオリジナルボックスの再利用のための付属品を売っていました。

私が手に入れた戦前のライカのオリジナルボックスは、そのレアなパーティションが付いていてそれぞれのパーティションの脇には鉛筆で書き込みがあって、息子と海水浴とか家族で京都見物とかそういう文字列が読めたのです。私は慌ててここに入っていたネガフィルムはないんですか?と二代目さんに聞いたら、あれ捨てちゃいました必要だったんですか、というお返事でがっかり。

ウィーンの古道具屋さんなどでもこのがっかりはよくあるんですけれど、150年位前のクラシックなアルバムが売られていてドキドキしながらアルバムを開いてみると、中の写真は全部破りとられていたりすることがあってがっかり。彼らの考え方はつまり実用品としての古いアルバムを売ろうとしているから、古い写真は破りとってしまうのです。それこそ人類の文化遺産なのにね。

ところで私のオリジナルボックスの研究成果ですが、1954年にライカM3が出たときにオリジナルボックスはそれまでの赤い箱から一変して、緑と青とグレーを基盤にしたツートンカラーになったのです。ライカに対するイメージが随分変わったわけですが、その時代に作られた国産のニッカカメラのオリジナルボックスはそのツートンカラーのデザインを真似しているのです。

しかし理由は不明ですが、数年でライカM3のオリジナルボックスはデザインを再度昔の赤が基調のデザインに戻しました。私が67年に手に入れたライカM2のオリジナルボックスはその意味でもとの赤い箱に戻ったわけです。

最後に1つだけ付け加えておけば、このおそらく世界にもう1つしか残っていないと推測されるKallo Wideのオリジナルボックスは、二代目さんが無料でくださったものです。

 

 

(2022.7)