我楽多屋で買ったモノ・マガジン 第297回
ドリップコーヒーと
印画紙の現像は似ているところがあることに気がついた
何十年も展開しているこの連載ですが、今回初めてコーヒーのことを書きます。
それというのも二代目さんの人気ブログでコーヒーのドリップのテクニックのことを書いていたので、それに触発されたのです。
若い頃、ヨーロッパに暮らしていた時は、自分で豆を挽いてドリップコーヒーをいろいろ試していましたが、この30年ぐらいはインスタントコーヒーのネスカフェの1番安いやつです。
ドリップでおいしいコーヒーができたというのは、逆に考えるとまずいコーヒーができたという場合もあるわけで、そういう人生の当たり外れというのはスナップショットに限った方が面白いというのが私の考え方です。いつも同じ味のコーヒーを求めるならインスタントコーヒーしかありません。
永井荷風が断腸亭日常で書いている当時、まだ名前がついていなかったインスタントコーヒーを闇物資として飲んでいた時の話ですが、断腸亭はこれをコーヒーの粉が残らないコーヒーと命名していました。なるほどね。
それで二代目さんがお店で入れているドリップコーヒーですが、ドリップ中にコーヒーフィルターがカップのコーヒーの中と接触してしまって、それが気に食わないというのです。たまっているカードのポイントでこういうエクステンションのためのフレームというのがあって、それを手に入れたので、最初の問題は解消したのですが、そうなると逆にコーヒーに味がないような気がすると二代目さん。
それで思い出したのが、私のモノクロ引き伸ばしの時のダークルームテクニックでした。私は現像バットの中で印画紙を規定の時間現像した後に、あと30秒だけ現像液につけておきます。そうすると、印画紙のトーンがリッチになったような気がするのです。
ドリップコーヒーのテクニックとダークルームのテクニックがオーバーラップしてきたのが痛快でした。
(2024.7)