アローカメラ         &我楽多屋

我楽多屋で買った  モノ・マガジン

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我楽多屋で買ったモノ・マガジン 第238

フォクトレンダーVitessaは明るいレンズ付きよりも暗いレンズ付きの方が良い。

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カメラジャングルの割合と下の地層から発掘されたレンズです。トレードマークの黄色いプライスタグが付いているのですぐにわかりました。

ルーペを使って二代目さんの書き込みはどうなっているのかをチェックするのが面白い。プランジャーが重いと書いてあります。私は何十台も同じカメラを使ったのですが、もともとプランジャーは重いもんなんですね。

不思議なことにこのカメラ、フイルムを装填すると若干トルクが軽くなるようなところがあります。だからフィルムを入れていないカメラを使って重く感じても、実際に撮影するとそのことが気になりません。

心理的な要因もこの場合にはかなりあると思います。フィルムの入っていないカメラを操作しているときは、全部の神経がカメラの方に行ってデリケートになってしまうから、カメラを操作したりすることに神経の全てが行ってしまいます。

ところが実際にフイルムを装填して撮影するときは、神経は全部が自分の体の外に向いていますから、カメラそのものは自分の体の一部と言うことになって、それほど気にならないのです。

このカメラを最初に手にしたのはオーストリアウィーンに住んでいた頃でした。手にしたカメラには明るいF2のレンズUltronがついていました。

それで夕暮れのwinの街などを撮影したのですが、問題点はこのカメラの距離計はどうもF2の解放絞りで1メーター前後のモチーフを撮影するには距離計のベースの長さが足りないようなんです。それに普通のスナップショットでは、まず明るさF2というような絞りで撮影することはありません。F2.8でも自分は実際にはF2.8で撮ったこともありません。

この蛇腹式のカメラはカメラ好きな人にはすごく好評なんですね。赤瀬川原平さんがお元気だった当時、西武デパートの何かのカルチャーセンターで赤瀬川さんと対談をする機会がありました。

その時、赤瀬川さんは長徳さんはフォクトレンダーに興味がないのはどうしてなんですか?と聞かれました。確かにその当時はフォクトレンダーなんて全然興味がありませんでした。それで赤瀬川さんに「勉強不足なのでこれから勉強します」と申し上げました。

それから数年後に信州中野のコシナカメラがフォクトレンダーのブランドを買収して、自社製の同じ名前のカメラを出すことになりました。その時に小林社長とフォクトレンダーのカメラに関していろいろ話をしたのですが、小林社長はVitessaが嫌いだとおっしゃっていました。

私がその時に痛感したのは、あーこの人は経営者としては優れているけども本当のカメラ好きではないなと思ったことでした。

会社の経営者からしてみると、まず1950年代のこのような構造のカメラが今の原価計算では作れないし技術も存在するはずがありません。会社としてはビッグヒットした安い自分の会社の一眼レフの本体をそのまま利用して、それでレンジファインダカメラを作るというのは経営者として素晴らしいアイデアだと思います。でも、それとこれとは全く違うんじゃないか?というのがカメラ人類の私からの意見です。

実はこのカメラは1950年代にアメリカでビッグヒットになったんですね。このようなかなりセンシティブなデザインのカメラをアメリカ人が受け入れたという事は、当時のアメリカはまだ捨てたものではなかったということになりそうです。

世の中ではライカにつける迅速な巻き上げ装置ライカビットが馬鹿な値段になっていますが、フォクトレンダーのプランジャーを使う、この巻き上げのやり方というのはそれよりもレベルが高いフイルム巻き上げのシステムであると私は思います。

我楽多屋さんで買ったカメラやレンズについている黄色いプライスタグの発掘作業はこれからも続きます。

 

 

(2019.8)